◆正午山房通信


「正午山房」は俳人原石鼎の終の栖で、鹿火屋代々の主宰が住みなしたところ。
原裕が午年の正午の生まれであったことから名づけられました。
四季と向き合う俳句のひとこまをお届けします。

三月を迎えると、唐実桜(からみざくら)が慌しく咲き、
中庭では馬酔木が壺のような花を、
土佐水木が黄色の鮮やかな花を咲かせました。
また、裏庭では蝶が舞うような著莪が咲き、玄関前では花にらの白い花が揺れています。
四月一日、四代目主宰の原和子の七回忌を修しました。
姉弟だけでの法要でしたが、菩提寺の知足寺に連絡すると、
最近は家族だけの法要も多いとのこと、快く引き受けてくださいました。
家を出る時、空は花曇りでしたが雨の気配はありませんでした。
ところが約束の時間に本堂前に立つと、
ぽつりぽつりとまるで花びらの影が落ちてきたかのように雨が降り始めました。
七回忌の法要は、ご住職と副住職のお二人がつとめてくださいました。
かなりのご高齢のためご住職にはめったにお目にかかれないと聞いていたので、
本堂にお姿が見えたときには本当に驚き有難く思いました。
ご住職は紫の衣、副住職は萌黄色の衣で祭壇に向かわれました。
浄土宗では、十遍のお念仏を唱和します。「なむあみだ、なむあみだ、・・・」と唱えて、
十遍目に抑揚をつけて「南無阿弥陀仏」と、唱え上げるのですが、
ご住職のお声には格別の慈愛がこもり、すっと胸に入って来た念仏は、瞬時に涙に変りました。
安心(あんじん)が得られたという思いはこういうものなのでしょう。
ご住職の上げられるお経のすごさを感じました。
浄土宗で重んじられるのが一枚起請文。
拝聴しながら、原裕が俳句の教えにも通じるものがあると好んで唱えていたのを思い出しました。
よく歌舞伎俳優の声について口跡のよしあしが言われますが、
もしかしたら僧侶にもあるのかもしれません。
副住職もご住職に劣らぬ口跡の持ち主の方のようで、
お二人の声明が流れるとまるで極楽浄土が立ち現れたかのようでした。
私の中にも小さなお浄土をいただいた気がしました。
法要前に降り出した雨は春の雷雨となり、落雷の音が本堂まで聞こえてきました。
私にはそれが祈りが聞き届けられた神仏の応答の声に思えました。
二本の塔婆を抱えて雨の山墓にお参りし、無事に法要を終えました。
その清浄感は、筆舌に尽くせないものがあり、しみじみと追悼供養の大切さを感じました。
                                  (24・4・2)







◆艸たろ館展示のご案内

艸たろ館は、大正13年に建てられた道山家の土蔵を改築したもので、
須賀川の俳諧の系譜をたどることを目的とし、
主に俳句関係の軸装、色紙、短冊をテーマごとに展示している。
道山家は、子規の「はて知らずの記」にも登場する須賀川の名望家である。

桔槹創刊百年を記念して母体であった俳誌「鹿火屋」創刊の主宰、原石鼎、
その妻であり二代目主宰であったコウ子、
道山草太郎友人で「桔槹」「鹿火屋」同人でもあった白河の画家、
大竹仰峰の三人展を令和4年4月20日~6月30日まで開催しております。
是非ご覧下さい。おいでの際はお電話をいただければ幸いです。
道山はるか(090-2157-7592)





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