◆正午山房通信

「正午山房」は俳人原石鼎の終の栖で、鹿火屋代々の主宰が住みなしたところ。
原裕が午年の正午の生まれであったことから名づけられました。四季と向き合う俳句のひとこまをお届けします。
梅雨に入ると紫陽花が競うように色とりどりの花を咲かせるようになります。
わが家の紫陽花は、原種とされる額紫陽花です。
花は小さな粒粒でその周りに大きな四枚の装飾花がつきます。
丸くならない分、華やかさには物足りなさがありますが、四葩(よひら)という呼び名がしっくりくる味わいがあります。
次々と色を変えることから紫陽花は「七変化」ともいいますが、それは梅雨空を表しているようにも思えます。
梅雨は、四季に次ぐ第五の季節ともいえます。
しとしとと降る雨には鬱陶しさがありますが、農家に対する恩恵も忘れてはならないでしょう。
雨の降り方によって梅雨はさまざまな表情をみせます。
荒梅雨のとき、雨が止んだ後に相模灘の海鳴りが一日中聞こえていることもあります。

     梅雨の海平らならんとうねりをり    裕

梅雨は夏の太陽と湿った大気がさまざまな美しい現象も見せてくれます。
虹や夕焼けが神秘的に見えるのも梅雨ならではといえるでしょう。
梅雨というと梅の実が黄色に熟す季節として知られますが、椿の実も色づいてくる季節です。
垣根のそばに夕焼け色の椿の実をみつけました。
また、梅雨は蔓草が盛んに茂るときでもあります。 雨にかまけて草むしりをしないでいると、野老や藪枯らしが伸び放題に伸びてしまいます。
いつの間にか、藪枯らしが夏みかんの木を覆って花を咲かせていました。
梅雨の晴れ間、青筋揚羽蝶がしばしば飛んできて一塊の花ごとに挨拶をしては去っていきます。
花のご機嫌伺いに来ているようです。
梅雨が明けると、蜩を皮切りに蝉が一斉に鳴き始めます。
海の神、「わたつみ」に対し、山の神を「やまつみ」といいますが、この地には次のような作が残されています。

     山つみと山ひめの蝉時雨かな      石鼎



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