
◆正午山房通信
「正午山房」は俳人原石鼎の終の栖で、鹿火屋代々の主宰が住みなしたところ。
原裕が午年の正午の生まれであったことから名づけられました。
四季と向き合う俳句のひとこまをお届けします。
満目緑の季節がやってきました。
王安石に「万緑叢中紅一点」という詩句がありますが、緑の中に映える朱色は美しいものです。
わが家には巨大な柿の木があり、先頃から緑一色の中に点々と朱色が見えるようになりました。
これは、紅葉の先駆けではなく、風通しが悪いことなどが原因で生じた病葉(わくらば)です。
ただ、その鮮やかな朱色は柿の葉であるという出自を語っているようでなかなか見事です。
梅雨時は、青柿も音を立てて落ちるので、柿の木の周辺は結構賑やかになります。
6月25日は、石鼎夫人コウ子の忌日です。
今年は少し早めに地元の方たちとお墓参りをしました。
コウ子が亡くなったのは梅雨の最中の大雨の日でした。
この日も昼頃から大雨になるという予報でした。
案の定、知足寺の山門に待ち合わせていると、
青空は一変し、ぱらぱらと雨が降り始めました。
お墓は山掛かった途中にあるので、足元が心配されましたが、
石段を登り始めると、いつのまにか雨は上がり、
青空に変わったので予定通りお墓参りをすることができました。
その後昼食を取り、句会をしてから散会となったのですが、
その間、雨は全く落ちて来ませんでした。
きっと天界の計らいがあったのでしょう。
コウ子は花鳥諷詠ばかりでなく生活詠にも巧みで、
戦中戦後の苦しい時代も句を読み続けました。
泣けぬ顔になまあたたかき梅雨嵐 コウ子
には、「物価高騰底を知らず」という前書がついています。
コウ子は、「この荒廃した世の中にあつて俳句人としての真摯なる生活を遂げたい」
という志のもと前向きで明るい生活詠をたくさん残してくれています。
それに励まされ、支えられて今日を生きることができることを幸せに思います。
たんぽぽの絮光り飛ぶはげむべし コウ子
ひたむきにただ草の実の飛ぶこころ 同
(23・6・28 原朝子)
◆艸たろ館展示のご案内
艸たろ館は、大正13年に建てられた道山家の土蔵を改築したもので、
須賀川の俳諧の系譜をたどることを目的とし、
主に俳句関係の軸装、色紙、短冊をテーマごとに展示している。
道山家は、子規の「はて知らずの記」にも登場する須賀川の名望家である。
桔槹創刊百年を記念して母体であった俳誌「鹿火屋」創刊の主宰、原石鼎、
その妻であり二代目主宰であったコウ子、
道山草太郎友人で「桔槹」「鹿火屋」同人でもあった白河の画家、
大竹仰峰の三人展を令和4年4月20日~6月30日まで開催しております。
是非ご覧下さい。おいでの際はお電話をいただければ幸いです。
道山はるか(090-2157-7592)
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