
◆正午山房通信
「正午山房」は俳人原石鼎の終の栖で、鹿火屋代々の主宰が住みなしたところ。
原裕が午年の正午の生まれであったことから名づけられました。
四季と向き合う俳句のひとこまをお届けします。
庭先では梅雨の花四葩が咲き、海紅豆が紅い花を掲げています。
海紅豆は祖母のコウ子が、幹の一部を貰い受けて庭に指して置いたところ
根づいた樹木でコウ子の忌日が近づくと律儀に花を掲げて教えてくれます。
十年ほど前に一度幹に亀裂が入ったため伐ったのですが、
切株の脇から生えた蘖がたちまち育ってまた大樹となりました。
樹木の生命力には本当に驚かされます。
コウ子の言葉に「有季定型俳句に現代人として我々が如何に美しき人間性に富んだ俳句を
作るかに最大の努力を払い、各々の心的生活をゆたかにし、
この荒廃した世の中にあって俳句人としての真摯なる生活を遂げたいと思います」
というのがあります。
俳句の効用というのはいろいろありますが、本道の俳句は人の心を浄化し、
ゆたかにするものだと思います。
最近、たまたま手にした阿波野青畝の『俳句のこころ』にも同様のことがかかれてありました。
「無風流な混濁した世間といっしょに住んでいて、それから脱け出せる術はなく、
ただ俳句の一筋を守りとおしていれば、心がしぜんに清まり澄んでゆくのであって、
どうしてもその俳句は格調の正しい香りの高いものであれねば気がすまなかった」
いっときの憂さ晴らしではなく、本当に心が澄まなければ、
それは俳句によって浄化されたとはいえないのではないでしょうか。
文学における浄化をカタルシスといいますが、浄化された句はそれを作った人にも
読む人にも光明を与えるものだと思います。
今、あなたの目の前にある俳句、ぽっと明りが点いたような幸せな気持ちになれますか?
一度、問いかけてみてください。
原 朝子
(25・6・20)
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